今回は、最近よく聞くようになった「地域包括ケアシステム」と美容について考えてみようと思います。地域包括ケアシステムとは、独り暮らしであっても、認知症になっても、中・重度の要介護状態となっても、住み慣れた地域でいきいきと暮らせるために、医療、介護、予防、および日常生活支援を一体的に提供するための地域づくりのためのシステムのことをいい、超高齢社会に向けて目指すべき社会ビジョンとして掲げられています。
20世紀は病気の世紀と言われ、医療は病院で受けるものという考え方がスタンダードでした。しかし、現在21世紀は長寿社会。病院で治療を受ける“病を治す”ということに加え、“支える”という概念が加わりました。
病院だけに任せるのではなく、地域全体で支え合う体制づくりが必要になってきました。つまり、病気を治療するだけではなく、「その人らしく生きる」「生きがいを見つける」「生活を楽しむ」「自分で自分のことができる」といった行動や心理的にポジティブな変化が介護予防につながると考えられています。
ご自宅でマニキュアを塗ってそれを誰かに見せたくて外出する高齢者の女性がいらっしゃるとお話しに聞いたことがあります。実際、60代後半から70代前半の女性に聞いたアンケートデータがあります。「元気に生活するために美容も大切だと思う」という問いに対してYESと答えた方は全体の69.9%。¹もいらっしゃいました。
ミニスカートやパンタロンが流行した時代に10代~20代のファッションに敏感な世代だった彼女たちの美意識は現代の若者たちよりも高いとも言われることもあります。美意識や価値観もひとそれぞれ。シニア世代だって「高齢者」とひとくくりにはできません。当然のことですが、若い世代の人たちは高齢者になったことがないので自分なりの高齢者のイメージがあると思います。よく、イラストなどで目にする杖を持ったおだんご頭の白髪のおばあちゃんやちゃんちゃんこを来てお茶を飲んでいるようなイラスト。今や、高齢者はもっとアクティブだったりするのです。
高齢者の方が知らない“美”の楽しみ方の情報提供や、そういった機会を作ることで、家にこもりがちだった方が外出をするようになったりすることも容易に想像できます。
固定概念に縛られず、さまざまな情報提供や場作りをすることがこれからの介護予防の取り組みかもしれませんね。
¹出典:ホットペッパービューティーアカデミー「訪問美容調査(シニア世代)」 (65~74歳、女性、現在美容室利用ありの方 N=1,030) 2017年10月 (1035文字)